こんなものからDNAが!?

2016.08.03

リライティング日:2024年06月22日

木製のアイスの棒からDNA型鑑定が可能であることを解説。歯ブラシと同程度のDNA抽出確率があり、綿棒以外の検体として有効な選択肢となります。検体の保存方法や各検体のDNA抽出成功率の比較も詳しく紹介しています。

アイスの棒でDNA型鑑定ができる?意外な検体の可能性

アイスの棒でDNA型鑑定ができる?意外な検体の可能性暑い日々が続くと、仕事終わりのアイスキャンディーが至福のひとときになる方も多いのではないでしょうか。ふと食べ終わった後の木製のアイスの棒を見て、「このアイスの棒でDNA型鑑定ができるのでは……」と考えたことがきっかけで、今回の検証が始まりました。

DNA型鑑定といえば、一般的には口腔上皮(ほほの内側を滅菌綿棒でこすって採取したもの)を検体として提出する方法がもっとも広く知られています。しかし、さまざまな事情から口腔上皮の採取が難しいケースも少なくありません。そのような場合、seeDNAでは歯ブラシやタバコの吸い殻など、綿棒以外の検体をご提出いただくことが可能です(1)。ただし、検体の種類によってDNAを抽出できる確率は異なります。では、木製のアイスの棒はどの程度の確率でDNA抽出に成功するのでしょうか。

検体ごとのDNA抽出成功率を比較

検体ごとのDNA抽出成功率を比較DNA型鑑定に使用できる検体は多岐にわたりますが、検体の種類によってDNAの抽出成功率には明確な差があります。一般的に、各検体のDNA抽出確率は概ね以下の順番になっています。

口腔上皮 > 精液※注1 ≧ 毛根の付いた毛髪※注2 > 歯ブラシ > タバコの吸い殻

口腔上皮がもっとも高い成功率を誇るのは、頬の内側の粘膜には多数の上皮細胞が含まれており、そこから安定して高品質なDNAを得ることができるためです。精液や毛根の付いた毛髪も比較的高い確率でDNAを抽出できますが、それぞれ取り扱いに注意が必要です。歯ブラシやタバコの吸い殻は、付着している細胞の量が少ない場合があり、口腔上皮に比べると成功率が下がる傾向にあります。

では、木製のアイスの棒はこの序列のどこに位置するのでしょうか。seeDNAで実際に確認してみたところ、木製のアイスの棒からは歯ブラシと同程度の確率でDNAを抽出することができることがわかりました。木製の棒は表面に微細な凹凸があり、口の中で舐めたり噛んだりする際に唾液や口腔内の細胞が繊維の隙間に入り込みやすいため、一定量のDNAが保持される仕組みになっています。

一方、プラスチック製のアイスの棒の場合は、表面が滑らかであるために細胞が付着しにくく、DNAの抽出が非常に難しいという結果になっています。検体としてアイスの棒を活用する場合は、必ず木製のものを選ぶことが重要です。

各検体の特徴まとめ

  • 口腔上皮:もっとも安定したDNA抽出が可能で、鑑定の標準的な検体
  • 精液:高いDNA抽出率だが、被検者以外の方が触れないよう注意が必要
  • 毛根の付いた毛髪:毛根が肉眼で確認できない場合は最低3本以上の提出が必要
  • 歯ブラシ:日常的に使用しているものから検体を得られる利便性が高い
  • 木製のアイスの棒:歯ブラシと同程度のDNA抽出率で、入手しやすい検体
  • タバコの吸い殻:抽出確率はやや低めだが検体として利用可能
  • プラスチック製のアイスの棒:表面が滑らかなためDNA抽出は非常に困難

アイスの棒を検体として提出する際の保存・乾燥方法

アイスの棒を検体として提出する際の保存・乾燥方法木製のアイスの棒をDNA鑑定の検体として提出する際、もっとも注意しなければならないのが雑菌の繁殖によるDNAの劣化です。これは血液と毛髪以外の検体すべてに共通する注意点ですが、特に気温が高い夏場は雑菌が急速に繁殖し、目的のDNAが破壊されてしまう危険性が著しく高まります。そのため、検体は完全に乾燥した状態でご提出いただくことが不可欠です。

アイスの棒を検体として適切に保存するための具体的な手順は以下のとおりです。

  1. 棒付きアイスを食べ終わったら、できるだけ速やかに乾燥作業を開始する
  2. ドライヤーの温風を使用し、約5分間しっかりと乾燥させる(もっとも推奨される方法)
  3. ドライヤーが使えない場合は、直射日光の当たらない風通しの良い室内で半日ほど自然乾燥させる
  4. 乾燥が完了したら、清潔な紙封筒や紙袋に入れて保管する(ビニール袋は湿気がこもるため避ける)
  5. できるだけ早くDNA鑑定機関へ送付する

乾燥が不十分な状態で密閉した容器に入れてしまうと、内部に残った水分によって細菌やカビが繁殖し、せっかく付着していたDNAが分解されてしまいます。特にアイスキャンディーの棒は糖分を含む水分が付着しているため、他の検体以上に雑菌が繁殖しやすい環境にあると言えます。迅速かつ確実な乾燥処理が鑑定成功のカギを握ります。

精液・毛髪を検体として利用する際の注意点

アイスの棒以外にも綿棒以外の検体をご検討される方のために、精液と毛髪に関する重要な注意点も併せてお伝えします。

精液について(※注1):精液を検体として使用する場合、被検者様以外の方が精液に触れないことが大前提となります。被検者様以外のDNAが混入してしまうと、血縁関係の有無を正確に判断できなくなり、再鑑定が必要となるケースがあります。被検者様以外の方が採取を行う場合には、コンドーム内に射精された精液を滅菌綿棒で採取するなど、他者の細胞が混入しない工夫が不可欠です。

毛髪について(※注2):毛髪でDNA型鑑定を行う場合、一般的に毛根が必要不可欠です。肉眼で毛根が確認できない毛髪の場合は、血縁関係の判定に必要なDNA量が得られない可能性が高いため、最低でも3本以上の毛髪をご提出いただく必要があります。なお、毛根がなくてもDNAから血縁関係を調べることが可能なのは、ミトコンドリアDNAを用いた母系鑑定のみとなりますのでご注意ください。

綿棒以外の検体選びに迷ったら木製アイスの棒も選択肢に

これから夏本番を迎えるにあたり、どの綿棒以外の検体を提出すべきか迷われる方もいらっしゃるかもしれません。木製のアイスの棒は、歯ブラシと同程度のDNA抽出成功率があり、かつ日常生活の中で比較的入手しやすいという大きなメリットがあります。歯ブラシの場合は他の家族と共用していないか、タバコの吸い殻の場合は本人以外が吸ったものが混在していないかなど、検体の確実性を担保するうえでの課題がありますが、アイスの棒であれば本人が食べたものを確実に確保できるケースが多いでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、プラスチック製ではなく木製のアイスの棒であること、そして食べ終わった後に速やかに完全乾燥させることが鑑定成功の大前提です。こうしたポイントを押さえていただければ、木製のアイスの棒は非常に有効な代替検体のひとつとなります。DNA型鑑定の検体選びでお悩みの際は、ぜひ選択肢のひとつとしてご検討ください。

よくあるご質問

Q1. 木製のアイスの棒からDNA型鑑定は本当にできますか?

A. はい、木製のアイスの棒からは歯ブラシと同程度の確率でDNAを抽出することが可能です。木製の棒は表面に微細な凹凸があり、口腔内の細胞が付着しやすいためです。ただし、プラスチック製の棒は表面が滑らかなためDNA抽出が非常に困難ですのでご注意ください。

Q2. アイスの棒を検体として提出する際、どのように保存すればよいですか?

A. 食べ終わった後、できるだけ早くドライヤーの温風で約5分間乾燥させるか、直射日光の当たらない風通しの良い室内で半日ほど自然乾燥させてください。乾燥が不十分だと雑菌が繁殖しDNAが破壊される恐れがあります。乾燥後は清潔な紙封筒に入れて保管し、速やかに鑑定機関へお送りください。

Q3. 口腔上皮以外の検体で、もっともDNA抽出の成功率が高いのは何ですか?

A. 口腔上皮の次にDNA抽出の成功率が高いのは精液です。ただし、被検者以外の方のDNAが混入しないよう取り扱いに細心の注意が必要です。次いで毛根の付いた毛髪、歯ブラシ(木製アイスの棒も同程度)、タバコの吸い殻の順となります。

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医学博士 富金 起範著者

医学博士 富金 起範

筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

【参考文献】

(1) Forensic Science International: Genetics(NIH PMC)、2019年3月
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